膵がん治療の新たな希望:超音波内視鏡を用いた金属マーカー留置術

膵がん治療の課題と陽子線治療

膵がんは早期発見が難しく、進行が早いことで知られる悪性腫瘍です。特に、手術が困難な切除不能局所進行膵がんに対しては、化学放射線療法が有効な治療法として注目されています。特に、陽子線治療は、正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら、がん組織に高精度な放射線を照射できるため、近年注目を集めています。

陽子線治療の精度を高める「金属マーカー留置術」

陽子線治療の効果を最大限に引き出すためには、がん組織に正確に放射線を照射することが重要です。そこで注目されているのが、がん組織に金属のマーカーを留置し、そのマーカーを目印に照射を行う「金属マーカー留置術」です。

3つの留置方法とEUS-FP

金属マーカーの留置方法には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 経皮的マーカー留置術: 皮膚から針を刺してマーカーを留置する方法。
  • 経動脈的マーカー留置術: 血管からカテーテルを挿入してマーカーを留置する方法。
  • EUS-FP: 超音波内視鏡を用いて、消化管から直接マーカーを留置する方法。

この中でも、最も新しく注目されているのがEUS-FPです。EUS-FPは、内視鏡の先端に超音波装置が付いており、消化管内から直接膵臓を観察しながらマーカーを留置することができます。そのため、他の方法に比べて、より正確かつ安全にマーカーを留置することが可能です。

成田記念病院におけるEUS-FP

成田記念病院は、EUS-FPの臨床研究において日本を代表する施設の一つです。同病院の外山貴洋医師と山雄健次顧問は、長年の経験と実績から、EUS-FPの有効性を確信しています。

  • 高い精度と安全性: EUS-FPは、超音波画像を見ながらマーカーを留置するため、他の方法に比べて精度が高く、合併症のリスクも低いと考えられています。
  • 患者の負担軽減: 内視鏡を用いるため、患者さんの身体への負担も比較的少ないです。
  • 欧米では既に普及: 欧米では、EUS-FPは既に広く普及しており、その有効性が認められています。

日本の現状と今後の展望

日本では、EUS-FPはまだ保険適用外のため、全ての患者さんがこの治療を受けることができるわけではありません。しかし、成田記念病院をはじめとする医療機関が、保険適用に向けた取り組みを進めています。

もし、EUS-FPが保険適用になれば、より多くの膵がん患者さんがこの治療を受けることができるようになり、治療成績の向上に繋がることが期待されます。

まとめ

膵がん治療において、EUS-FPは新たな選択肢として注目されています。この技術の普及により、より多くの患者さんが陽子線治療の恩恵を受けることができるようになるでしょう。